扉の前に立ち尽くして
一体どれだけの時間がたったのだろう。

鍵が掛かっていることもないだろうし
押しても開かないくらいに
形を変形させたような古びているわけでもない。
ついさっきだれかが開けたとしても
不思議ではない、そんな扉だ。

扉を開けて向こうに行く用事があったかもしれないし
耳元で「君が開けることを望んでいる者はいない」とささやく
僕の陰みたいな声が聞こえてきたような気もする。
何にせよ、たった一つの出入り口を目の前にして
僕は立ち尽くしてしまっている。

戻るべき道はない。
進むとしたら、開けばいい。
ただそれだけのことなのに
早送りでゼロから進んでいる僕の記憶は
たった現在の地点で一時停止してしまった。
再生を続けるためのボタンはどこにあるのだろう。

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By GloomyWind 2003/3/31
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